「郷ひろみに勝ちたい」


 今日の夕方の出来事です。
 農作業に使ういろいろな小道具を置いておく物置スペースがあります。冬場に雪に埋もれないように一応の屋根はついているのですが、足元は土間ですから、屋外といったほうがいいかもしれません。
 そこで探し物をしていたところ、雑草が地面から30cmほど生えてきているのが、気になりました。草むしり草むしり、と腰をかがめ、素手でわしづかみしてちょっと引っこ抜き始めたときです。
 ダンボールの箱の陰から、何か小さくて早いものが突然あらわれて、僕の顔に襲い掛かってきました。20匹くらいでしょうか。ウワッと思ったときには、左耳の上、こめかみのところを刺されていました。叫びながらあわてて後ずさり。手で払いのけると目の前を黄色と黒のハチの大群が、ワンワンと狂ったようにあばれ回っていました。
 「やられた! ハチだ!」僕も必死ですが、ハチも必死です。その場から全力で逃げ出すと、近くにいた人に「ハチに刺された、ハチに刺された」と伝えました。アレルギー性のショックに陥ると最悪の場合、呼吸困難になったりその場に倒れたりします。ハチの毒が体のどこかにまわる前に緊急事態を誰かに知らせておく必要があります。
 かなり攻撃的なハチであることはわかりましたが、チラッと見ただけなので(なにしろあまりに急な出来事でした)、それがミツバチなのかアシナガバチなのかクマンバチやスズメバチなのか目ではっきり確認は出来ていません。スズメバチでないことを祈りながら、はさみで自分の髪を切り落とし、患部の毒をもみだすようにシャワーで洗いました。
 ハチは白い色がよく見えないらしく黒いものを敵と認識します。顔をめがけて攻撃してきたわけではなく髪の黒さに向かって襲い掛かってきたのですね。群れが突如、顔のところに来たので本当に恐怖を感じました。どうやら刺されたのは一ヶ所だけのようです。
 ハチの毒は一回目よりも二回目のほうが、二回目を刺されるのよりも三回目のほうが、より危険だといわれます。僕はハチには3年か5年に一回は刺されているので、もう一度二度ではありません。キンカンを塗り、まずは氷で冷やします。キンカンが目に沁みます。15分安静。頭半分がジンジン痛み、側頭部が赤く腫れ上がるなか、ステロイドの軟膏をつけ、解熱・解毒の漢方薬を飲みました。

 夜になってこうして駄文を書いていられるのは、3時間ほどして大丈夫なことがわかったためです。いあや、よかった。ほっとした。
 日本でハチに刺されて亡くなる人は、多い年には30〜70人にものぼります。これは熊よりも毒ヘビよりもはるかに多い数だそうです。なかでもスズメバチは特別に「国内で最も危険な野生生物」と呼ばれるそうです。たかがハチ、されどハチです。
 ところで、くまのプーさんは、蜂蜜が大好物ですね。熊は、蜂蜜やハチの子を狙って蜂の巣を襲いますが、あまり刺されたりしないものでしょうか。全身が黒っぽい毛で覆われているのにもかかわらず、あまり熊がハチに弱いとは聞いたことがありません。
 それに比べて人間は、熊と相撲をとっても勝てないし、ヘビにキスされても危険だし、小さなハチに一突きされただけで病院だ救急車だと右往左往です。弱い存在ですね。でも、そうだ、郷ひろみがいるじゃないか、と思い出しました。
 「ゴーゴージェット、アースジェット、トリガーノズルさー」と踊りながら郷ひろみが、派手なジャケットの内ポケットからスプレーを取り出して、噴射するコマーシャル。アレです。トリガーノズルが何なのかは意味不明ですが、楽しくて強そうです。
 僕も明日は、白シャツ白マスク白ほおっかむりのいでたちで、ハチの巣の撃滅を目指したいと思います。やられてばかりじゃいけません。
 郷ひろみがジェットスプレーなら、僕の武器は発炎筒です。
 サッカーのスタジアムよろしく、獰猛なハチを煙に巻いて、眠らせてやる作戦です。



イネの花

田んぼの半分以上に穂が出ると、「出穂」と呼びます。

株元は、湿気た程度の水分、風通しよく管理します。


 
 



もうすぐ秋になります。



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