「不思議がおもしろい」

   確かに、ほんとに不思議です。
   小学生がヤゴをつかまえに来ました。
水槽で飼って、トンボのなるところを観察するそうです。東京でずっと育ったピカピカの小学1年生、もちろん田んぼの中に入るのは初めてです。長靴持参で来てくれました。
 この時期、田んぼの中は、生き物でいっぱいです。ヤゴ、ミミズ、どじょう、おたまじゃくしに、足の出たカエル、小さなエビに、タニシ・・。1時間も泥水をバシャバシャさせて遊んだでしょうか、いろいろバケツにつかまえて上がってきました。子供が大きな目を見開いてバケツの中をのぞきこむと、大人はあらためて気付かされます。
水中の虫けらのようなヤゴが、どうして羽根を出し、細長い胴体になって、あんなカッコいい姿に変身し、頭上を滑空するのか。そりゃ、不思議ですよね。そして不思議はヤゴにとどまりません。おたまじゃくしだって、水中では金魚の薄汚れた子分のようなのに、やがて足が生え、陸に上がってゲコゲコ鳴く。その上、ピョンピョン跳ねる。雨のあとの草むらは、カエルだらけです。おたまじゃくしになる前は、白っぽい泡のような卵だったのですから、その成長の過程というか、出世の仕方というか、ものすごい変化です。
泡 → 金魚の子分 → ぴょこぴょこ跳ねる。普段、何とはなしに田んぼの周りで生活していますが、感性豊かな子供の導きで、あらためて自然の神秘に感動してしまいます。

   ちょうど、ワールドカップの関連番組で、「サッカー選手の脳にせまる」というのをNHKでやっていました。ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は私はビデオに録画して、何度も繰り返し見ています。
   これまで、スポーツの能力差は「先天的な運動神経の差・体格差」と言われてきました。しかし、脳の働きを探っていくと「トレーニングの差」も実は大きい、と分かってきたそうです。息を呑むような超絶プレーは、いったいどこから来るのか。日本人の平均的な体型とほとんど変わらないブラジルやスペインの選手が、スーパースターとしてワールドカップで輝けるのはなぜなのか。骨格や筋肉の差ではないのだから、きっと脳の差だ、じゃあ、脳の何が違うのか・・・? 惨敗した日本ですが、あきらめる必要はありません。脳の働きの研究は、まだはじまったばかり。これから研究がどんどん進めば、世界との差もあっというまに縮まるかもしれません。

   私たちの専門であるイネについても、できれば科学者に研究して欲しいことがあります。
それは「イネのこころ」についてです。
 イネは植物ですから、脳はありません。脳がないので、当然、こころもありません。・・・と、普通はされています。しかし、それは本当でしょうか。事実でしょうか。日々、イネと接していると、イネは本当は人間の話を聞いているんじゃないか、私たちの愛情やらメッセージをちゃんと受け取ったり、こばんだりしているんじゃないか、そう感じることが多いのです。快・不快にとどまらず、喜怒哀楽のようなものをイネから感じることさえあります。コミュニケーションがあるのです。
 人間に「こころ」があるように、ひょっとしたら、植物にも「こころのようなもの」が存在するのではないか。農民がイネを観察するのは、愛情というよりは、そのあたりの不思議を解明したいのかもしれません。

 小動物の成長も、サッカー選手の脳の働きも、イネのこころも、不思議でおもしろいですね。

 



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