「発酵のまち」

市の広報誌に「発酵のまち」という言葉を見つけました。
雪が多さではどこにも負けないくらい全国的に有名ですが、その雪のおかげで、さまざまな発酵食品が育ち、花開きました。新潟県上越市は「発酵のまち」という名で売り出したいとのことです。

発酵。こうじ菌や乳酸菌や酵母などいろいろな微生物の働きにより出来上がる発酵食品。日本人の食卓に欠かせない味噌やしょうゆ、日本酒はどれも発酵食品です。そういえば上越市には本当に多いですね。市内には現在でも、昔ながらの造り酒屋は10以上あり、またワイナリーもあります。小規模ながら味噌蔵やしょうゆの醸造所なども地域には根付いています。

微生物が活発に活動するときに、重要なのが温度と湿度です。
冬場に、雪、雪、雪とどこを見渡しても雪に囲まれているため、ほぼ湿度100%。雪国なのですごく寒いところと思われがちなのですが、実は気温はほとんど氷点下にはなりませんので、全国的に見てもそれほど寒さが厳しいわけではありません。また夏も、豊富な水資源のおかげで川や田んぼも多いため、年中を通して湿度が高い気候です。

酒や味噌作りに必要な微生物はこうじ菌ですが、これはカビの一種です。カビですから高温多湿の環境が大好きでしょう。
地元の造り酒屋で、こうじ室に入ったことがあります。初めて、このこうじ菌のタネ菌をさわったときには「うわ、やっぱりカビだ」と思いました。
緑色のフワフワした綿毛のある細かいチリのようで、事前に知らなければ完全にパンに生える緑のカビと同じに見えました。これが食べ物の素とはとうてい思えず、身体に付着したり間違って吸い込んだりしたら病気になるのでは、と思えるほどでした。
それにしても一番最初にこうじ菌を発見して、培養した人はすごいですね。周りからはカビを増やしてどうするつもりだと嫌がられあきれられたでしょう。
でも、もしこうじ菌がなかったら、というか誰かが発見して使ってみなかったら、味噌もしょうゆも食酢も、日本酒もみりんも焼酎も、たくさんの漬け物も、この世に存在しないことになります。日本人の食卓は、こうじ菌というカビの働きによって支えているといってもいいくらいです。
結局、低温発酵というのがミソなのでしょう。(こうじ菌だけにミソ・・・なんちゃって)
カビの好きな高温多湿ではなく、低温多湿の環境で発酵させる・・・。 冬の雪室の中で0〜5度くらいで発酵させると、雑味が混じらずに端麗な味わいに仕上がるのです。雪の多い地域ならでは特典でしょうか。

米こうじに塩と水を加えた「塩こうじ」はここ数年流行っている万能調味料です。
似たようなものとして、酒かす、かんずり、魚醤などがあり、地元ではお土産にもなる定番の発酵調味料です。添加物やインスタント食品が全盛のご時勢ですが、田舎には田舎のよさがあり、まだまだ伝統の味は受け継がれているように感じます。
地酒や、無添加の味噌や、手作りの漬け物などがそろった食卓が、もう少し見直されていい頃です。美容のためにも健康のためにも発酵食品に注目です。

「また降り出した・・・。ああ、駐車場の除雪・・。いや、こんなに降ったら屋根の雪下ろし・・・」と雪に振り回される冬ですが、その雪のおかげで食文化が豊かになったのかと思うと雪にも感謝しなければなりません。

 
雪の重みで折れた枝も花芽が膨らみ始めました
雪の重みで折れた枝にも花芽
青空と雪の田んぼ
雪の下は、湿度100%も温度0℃と微生物好みです



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