「種まく人」

 「種まく人」。ゴッホとミレーの絵です。
ゴッホって、ずっとヴィンセント・ヴァン・ゴッホだと思っていたんですが、最近はフィンセント・ファン・ゴッホと表記するようで、音がにごらない。フランス語読みからオランダ語読みに変更になったのでしょうか?? ま、とにかくその「種まく人」です。
 ミレーの絵はほぼ白黒で、力強い印象。夕暮れの広い畑に一人で黙々とまいている、そんな感じです。いっぽう、その絵に触発されたゴッホのほうは、鮮やかな色彩で農夫を描いています。しかし、こちらも一人。夕方なのでしょう、太陽が横にあります。そしてどちらも寂しい絵です。
 絵画の評価はさておき、農業者としてあの「種まく人」の作品にはちょっと違和感があります。種まきってあんなに悲壮感がある寂しいものでしょうか。あれほど決意に満ちた覚悟が必要なのでしょうか。

 私たちにとって4月は種まきの季節です。
 田んぼに直接まいて栽培する方法もありますが、日本では苗代に種をまき、苗が大きくなったとこで本田に田植(移植)する方法が一般的です。田植機に載せやすいように苗箱というもので苗を育てます。苗箱は新聞紙を半分に折ったくらいのサイズですから、持ち運び・積み重ねに便利です。その苗箱に機械で種をまいていき、それを苗代で育てます。
 一人の作業じゃなく大勢でするのですが、結構、和気藹々と冗談を言いながらするものです。長かった冬が終わり、どかすにどかせない厄介な雪も消え、春の訪れを喜びながらする作業が、種まきです。さて今年もいよいよ始まるか、元気出していくか、そんな軽い高揚感さえあります。ちょうど新学期を迎え、新しい学年になる小学生の心境ににているでしょうか。悲壮感よりも、何が起こるのか、わくわくドキドキのほうが大きいと思います。
 種まきとか育苗って、生まれたばかりの赤ちゃんを扱うようなものですから、緊張はしながらも明るく楽しい気分で作業は進みます。例えば話題は、高田公園の桜が咲いた、とか、川の水が冷たいなあ、とか、花粉症が治まらない、花見に行って飲みすぎた、おまけに風邪を引いた。妙高山が今日もきれいに見える。隣の子供が保育園から小学生になった。あの子そんなになったの、おおきくなったねー。俺、タバコやめるし・・・。いや、それは無理・・。そんなたあいもない会話ばかりです。
 ミレーともゴッホとも話をすることは出来ませんが、もし望みが叶うなら、日本では、種まきって明るく楽しい作業だよ、と伝えたいですね。
 インターネットで調べたらミレーの「種まく人」は山梨県立美術館が所蔵しているそうです。ちょっくら出掛けて、実物を見てみたくなりました。




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