「温泉に行こう」

 レジャーといっても、田舎では遊びにいくところがほんとにすくないので、家族連れで、または友達とちょっとした機会にぶらっとでかけるのは温泉です。
 「ところで、風呂でも行く?」
 「帰りにちょっと温泉でも寄っていかない」
 休日はもちろん、平日の夕方でも、仕事帰り、買い物に出たついで、時には保育園に子供を迎えに行ったその足で、温泉に向かいます。車で30分圏内を見渡せば、おそらく10以上の、ひょっとすると20くらいの温泉施設があると思います。
 そんな気軽に温泉に行くのか、優雅だな〜と感じられるかもしれませんが、立派な温泉じゃありません。日帰りタイプの小さな温泉がほとんとで、観光バスが何台も詰めかける大きな温泉旅館ではありません。和服を着た女将さんが玄関で出迎えてくれることも、豪華な料理もありません。宿泊可能な部屋はあっても宿泊客はほとんどいません。昔の感覚で言えば「銭湯」です。
 流行の温浴施設、健康センターならば、打たせ湯だとか、ハーブ湯だとか、サウナとか、いろいろあるのでしょうが、町営または3セクでやっているところは、そんな気の利いたものはものはなくて、10〜20畳くらいの湯船が2つくらいあって、あとはおまけに小さい露天風呂がつく。その程度です。観光客はいなくて、ほとんどは地元の人たち、じーちゃんばーちゃんです。サンダル履きにタオル1本持って軽トラでやって来て、帰りにアイスをくわえながら帰る、昔の銭湯のイメージそのままですね。そしてもちろん、近所のひとたちと世間話に花が咲く社交場であります。大都会のサラリーマンになぞらえば、さしずめ会社帰りにぶらっとビールを一杯、そんな感じじゃないでしょうか。日帰り温泉はワンコイン、だいたい500円くらいで入れます。
 最近、温泉の成分に興味がでてきました。カルシウムが多いとか、鉄分が多くて水が赤いとか、塩分が多くて塩辛いとか、そういう成分です。
 ただの地下水を汲み上げて沸かしただけものは、温泉とは呼ばないそうです。温泉と鉱泉は違うとか、ボイラーで加熱していますとか、循環ろ過していますとか、脱衣所に張り紙があって解説があります。そういえば、においのあるお湯、ヌルヌルしているお湯、濁っていて不透明なお湯、いろんな種類のお湯があります。
 自然のものなので時期によって、濃さが変わってみたり、噴出量が変わってみたりということは、あるんじゃないかと思います。書いてはありませんが。立派な施設は建てたけど、ある日突然、温泉が涸れてしまったなんて事態も、きっとあるはずです。
 今年、北陸方面はカラ梅雨模様で、たいして雨が降りません。冬の時期の降雪も少なかったので、川の水も細くなりました。天からの水が少ないとことは、田んぼの用水にはミネラルの多い地下水(伏流水)が含まれているはずで、しかもその濃度が上がっているんじゃないかなぁと考えています。
 これはまだ誰も論文などで発表していないと思うんですけれど、たとえば、田に引く水のカルシウムの濃度が上がれば、田んぼの表面はアルカリに傾きます。普通田んぼの土は酸性ですが、アルカリにふれるようになると思うんです。マグネシウムをイネに吸わせると米の旨味が増すことが分かっていますので、そういう地下水の多いところから上がるコメは美味しくなるはずです。今年のコメは雨水よりも、より成分の濃い地下水で育っているような気がします。秋が楽しみです。
 土砂崩れが起こるくらいの豪雨のある年も、田んぼの用水には濁った水が流れますので、味がいいようです。
 昔の農家は収量を上げることを目標にしてきましたが、現代の農家は旨味の向上が第一です。透明な雨水で栽培したものよりも、複雑な成分が混じった地下水で育てたほうが旨味が増すのです。そうしてみれば雨の少ない梅雨も、水が涸れさえしなければ意外と悪くないかもしれません。 




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