「ヘイケボタル」

 6月中旬から、8月頃までが、蛍の見れる季節です。
 昨年までの蛍は、チラホラといるんだかいないんだか、1匹こっちで光って、もう1匹こっちで光ってと、探すのが大変なほどでした。
 ところが今年は蛍の当たり年かと思うほどに、蛍がたくさんいます。主に田んぼの水路にいて、時々田んぼの中にもいます。田んぼの水路は二種類あって、田んぼに水を入れるための用水と、田んぼから水路に落とされた水が流れるための排水用の水路です。蛍がいるのは排水用の水路沿い。

 夜、水を落とした田んぼの様子を見かたがた、子供を連れて散歩に出かけたところ、先に歩いていた近所の人が、
 「おまんたちの田んぼにホタルいっぱいいるわね。(あなたの田んぼにホタルがいっぱいいるよ。)」と教えてくれました。行ってみると、私たちより先に水路沿いに数人の子供がいます。
 「ホタル!ほら、ホタル!」
 「こっち、こっち、いっぱいいるよ!」
 なになに。ホタルか。と思って見に行くと、びっくり仰天するほどに、たくさんのホタルが光っています。田んぼの真ん中なので真っ暗闇。その暗闇の中で黄緑色の光がホワンを浮かんでいるように光ります。
 「ここにねー。かたまっているんだよ!」
 「ホラ!オレ2匹つかまえた!こうやって、投げると飛ぶんだ!」黄緑色の光がゆっくりフラフラと移動して、その遅さは失速するんじゃないかと心配してしまうほどです。
 「みてみて。交尾してるやつもいるんだよ。」
 光ながらオシリをくっつけたホタル。そっと草むらに帰します。

 図鑑で調べてみると、小さな光を放つのは、どうやら「ヘイケボタル」。ふむふむ。ヘイケボタル→幼虫は水田や池にすみます。(そうそう。水田にいた)卵から成虫まで発光します。(それは、知らなかった!)大きさは、7〜10mm(そうそう、小さいよね。)生息地は、北海道から九州。

 田んぼや水路で育った蛍の幼虫が成虫になり、夜には静かに光っているのです。なんだか、心温まるような、素敵な光です。

 用水の際は、除草剤が使っていいことにはなっているのですが、今年は除草剤を止めました。機械を背負うのが重くて億劫だったのが一番の原因で、多少時間はかかるが草刈にするか、と思っていたのです。もちろん、畦からも農薬を減らそうという思いもありました。
 それで、今年は水路に直接かかる農薬が減り、蛍の幼虫から成虫に変わるタイミングで今まで死んでいた、たくさんの蛍が生き残ったと考えられます。生き物が、田んぼの中やその近くで生き残っていくのは、実はそんなに難しいことではなかったのですね。
 農業の現場で、農薬を全く使わないことは、難しいと思います。それでも、少しずつ、減らしてゆくことでこんなに素敵なプレゼントがもらえるんだなぁと、ちょっと感激しました。
 8月まで、蛍が見れるということで、子供もはしゃいで毎日散歩に行きたくなったようです。
 「田んぼの作業は、毎日夜にすれば?」と言われてしまいました。いや、何も、そこまでしなくとも・・・。




HOME

Copyright (C)1997-2009 Akiyama-farm. All rights reserved.

このホームページ上に掲載されているすべての画像・文書などの無断転載を禁じます。