「マグロとイカ」

 風が吹けば桶屋がもうかるは、楽しい小話のことだとおもっていました。
 原油先物の値段が一向に下がりません。すべての物価高は、この原油先物価格から始まっているようです。
 ガソリンの小売価格が130円を超えたとき、ずいぶん高くなったなあと高所から見下ろす気分になりました。まあ今思えばですが・・・。それが今では1リットル180円の声も聞こえてきます。今度はどこまで上がるのかと戦々恐々、逆に山の裾野から頂上を仰ぎ見るような感じです。山の高さに、圧倒されてしまいそうです。農作業は燃料をたくさん使います。燃料を使って二酸化炭素を排出する環境にやさしくない部分と、緑を育てて環境を守る部分と両方あるのが農業なのです。燃料高騰は農業経営を直撃します。
 原油が上がればガソリンや軽油の値段が上がるのは当たり前です。プラスチック、ビニールなどの石油から精製されるものも、連れ高で値段が上がるでしょう。ところが今回の物価高は、石油関連にとどまらずなんでんもかんでもが上がっているのですから、困ります。鉄や金属も商品市況では上がっているようですが、市民生活に影響するのは電気代やガス料金などの公共料金。そして食料品です。
 食料油は、バイオ燃料との農地争いから上がりっぱなしです。アメリカでは農耕地そのものの不動産価格まで上がり始めたと、新聞では報じられています。
農地が足りなくなりそうだとなれば、穀物の値段だって据え置きのはずがありません。まずは小麦、大豆、トウモロコシが上がります。国際的な小麦の価格が上がれば、パンや麺やスナックの小売単価も引き上げられます。飼料用トウモロコシの価格が上がれば、酪農や畜産経営にしわ寄せがあって、ひいては肉の値段、卵の値段、乳製品の値段にはねかえります。
 マグロ漁船やイカ釣り船が、操業を停止したというニュースも入ってきました。乱獲による水揚げ高の減少に加えて、燃料高騰で、船なんか動かしてらんないということだそうです。マグロとイカが食卓から消えるのでしょうか? どちらも僕は大好きなので困りますね。お寿司屋さんはどうするのでしょうか? マグロとイカのない寿司はちょっと想像が出来ません。
 報道によれば、マグロやイカの漁業はそろばんが合わないとのことですが、パンやマヨネーズのように値上げで対処することは出来ないのでしょうか。なんだか釈然としないので額面通り受け取るのもどうかと。裏があるようにも思えます。一種のストライキだとすれば、政治的なテコ入れを待っているのかもしれません。
 農業の世界では、とりわけ燃料をたくさん使うビニールハウス経営は、野菜でも果物でも上がっています。施設園芸は燃料に大きく依存しているので、こちらだって操業停止になってもおかしくありません。
 おコメはといえば、まだ小売価格が大幅には動いていません。コメはいま食料品高の蚊帳の外に置かれています。ただし、この1年でパンや麺類の価格が上昇したので、コメ食が比較的に安いと注目を浴びているのも事実です。世界的にもその傾向はあって、アジアの主要なコメの輸出国は軒並み輸出制限を始めました。小麦や大豆と違い、コメは国際的な先物相場が存在しませんので毎年の秋口になるころに生産量と照らし合わせて、基本価格が決まってゆきます。日本は唯一、コメあまりの国といわれています。それで、ここ2〜3年は生産者米価が大きく値下がりしました。しかしそのまま割安に放置されることは考えにくいようにも思えます。今年の米価はどうなるのでしょう?
 まさかマグロ漁船と同じように、燃料代が上がりすぎて秋にコンバインが動かせない、操業停止だ、なんてことはないでしょうが、米価の形成と原油価格の行く末には、片時も目がはなせなくなりました。 




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