「バイオ燃料の功罪」

 世界最大級の原子力発電所、柏崎原発は7月の中越沖地震の影響で、運転を停止したままです。再開のめどはたっていません。放射能漏れなども噂されるなか、事実はすべて塀の中(原発は高い塀でぐるり囲まれています)。付近住民も何が起こっているのかわかりません。教えて欲しい。で、運営している東京電力は追加で社債の発行をするそうです。施設の修繕費だけでなく、原発の停止でこんどは火力発電所の燃料負担が増えているのだそうです。
 燃料費の負担が増えているのは東京電力だけでなく、トラクターやトラックが動きまわる我らが農場でも同じです。特に2007年に入ってから、ガソリン代はあがりっぱなしです。それもそのはず、1バレルあたりの国際原油価格は、もっか史上最高値を更新中だとか・・・。いまレギュラー1リットル140円。ガソリン代の高騰は、運送会社あたりも頭のいたい問題でしょう。施設園芸でビニールハウスを冬に加温するときには重油をたくとこが多いのですが、園芸農場もこの冬を見越してもうそろそろ電卓をたたく頃でしょう。燃料費高騰でハウス野菜はこの先値上がりするかもしれません。
 石油の値段が上がれば、注目されるのはバイオ燃料です。
 バイオ燃料といえば、使用済みてんぷら油だとか、生ゴミ・汚泥の発酵過程ででるガスだとか、ゴミとして焼却していた廃材だとか、そういうものを原材料に使うことから、環境にやさしい、リサイクル、といった趣旨でこれまでは取り上げられてきました。高い理念がまさにエンジンとなって推進してきた格好です。稲作の現場でも、減反している空き地のような田んぼでコメでもワラでもつくって、それを発酵精製しバイオエタノールをつくろうという理科の実験みたいな話もずいぶん前からありました。でも経営としてだれも本気で取り組まなかったのは、単にそろばんが合わないからでした。
 日本で作るからコストが高い。じゃあよその国で作るなら、どうか? 
 これが結構いいようです。基本はトウモロコシ。
 アメリカではバイオ燃料専用のトウモロコシを現在急ピッチで開発中と、風の便りで聞こえてきます。畑で食糧をつくり何かの加減で余ったら燃料精製にまわす、なんてなまやさしいものじゃなく、種をまくときから、一番最初から燃料にするためのものを栽培するんです。従来はコスト的に合わないと言われていたのが、ここ最近の原油高で採算ラインにのってきているのかもしれません。日本の農水省もバスに乗り遅れるなとばかりバイオ燃料に補助金をつけて気合を入れていますが、あんなにコロコロと農水大臣が替わっていてはバスは発車してしまいます・・・・ああ、おそまつ。
 燃料を石油にすると二酸化炭素を排出するだけ、これは地球温暖化。環境破壊。ところがトウモロコシ原料のバイオ燃料にすれば、トウモロコシを栽培する畑で二酸化炭素を吸収します。光合成の働きで二酸化炭素が行ったり来たり。温暖化を少しは食い止める方向になりますね。あとは1リットル150〜200円くらいで流通できるのかどうか。そこが焦点です。
 でもいい事ばかりでもありません。肉や卵や乳製品の値段がじわじわ上がるようです。海外ではすでにそうとうあがった国もあり、日本にも波が押し寄せてきました。トウモロコシ栽培は主食用もありますが、世界中もともと多くは家畜のエサ向けです。飼料を作るか、燃料を作るか。同じ畑でどちらを作るか、綱引きが始まりましたからもうたいへん。飼料用トウモロコシが一気に品薄になり、豚や鶏のエサが急騰。めぐりめぐって、肉や卵の値段が押し上げられています。卵は物価の優等生だった時代は、原油高で吹き飛ばされるのでしょうか。国産豚肉も国産卵もエサはほとんど外国産なのです。
 環境問題と物価高。なんとか上手くバランスがとれないものでしょうか。




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