「悲しき不当表示」
わが家の食卓での会話。
「知ってる? 『銀むつ』って魚は、いないらしいよ」
「あ、それ見た見た。偽装表示! 魚の名前じゃないなら、商品名? 登録商標? なんていうの?」
「本当は『メロ』っていう南米の魚・・・。でも、メロって名前じゃ売れないだろう、っていうんで・・・」
「そうだよね。銀むつって言うと、おいしそうな感じするもんね。むつの仲間か、そりゃおいしい、って、やっぱり思うよ。まあ、正確には、不当表示だろうけど、それほど悪質な感じはしないねえ」
「じゃあ、『キャットフィッシュ』って、ナマズみたいな顔の、白身の魚は、・・・。これはね、確か『しみず鯛』って名前で売られてる。魚の形は、鯛というよりはナマズ! フライで食べるとおいしいんだって、しみず鯛」
「ほー・・・。あ、『ししゃも』もそうらしいよ」
「ししゃも。ああ、テレビで、おばさん怒ってたね、すごい剣幕で」
不当表示にも、いろいろあります。
悪質な例では、生産量の何倍も、「新潟コシヒカリ」「魚沼コシヒカリ」が売られているという事実。これは、まずいですよね。袋の表示と中身が違うわけです。日本中ほとんどどこでも売られていますからね。いかに米どころとはいえ、日本全国津々浦々に行き渡るほど、たくさんの量があるわけではありません。明らかに誰かが偽って販売しています。
それから、輸入牛肉を「国産」と偽って販売した事件。これなんか、集団で行われ意図的なだけに、詐欺に近いというか、もうほとんど犯罪だと思います。まだ法律が整備されていないからなのか、当事者が引責辞任をするだけで、訴えられることもなく、ことが済んでしまうのは、なんだか納得がいきません。
悲しいことです。
お客さんにウソをついてまで、どうしても売りたい、成績をあげたい、という自己中心的、モラルのなさ。悲しいことです。
いっぽうで買う側も、名前でしか、商品を評価することしか出来ないために、簡単にだまされる。商品の質を確かめる感性が、ほとんど無いので、名前でしか判断できない。おいしいとかまずいとか、そういうことよりも、情報や知識で先に判断するのです。悲しいことです。
だから、ウソをついて売るほうが、もちろんずーっと悪いですけれど、だまされて買うほうにも責任はあると思うんです。自戒も含めて、そう思います。
わが家には、まもなく2歳になる子供がいます。幼児はすごいですよ。いいものか、良くないものかを嗅ぎ分ける能力をきちんと持っています。自分がおいしいと思ったものは、他人のを奪ってでも食べますし、おいしくないものは要らないとはっきり拒絶します。それが傍から見ても、実に的確です。値段が高いとか安いとか、ブランド商品とか何とかは、関係ありません。自分の中に、味だとかにおいだとか舌触りだとか、感性をベースにした確固とした品質判断基準があるのです。
大人になると、頭がよくなるばっかりで、本質的な何かを忘れてしまうのかもしれません。
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