1999年4月

「鳥殺し」


る集まりでトリ鍋をしようということになった。廃鶏を「自分でつぶすのはいやだから」と2羽、提供する人がいたのである。
抽選の結果、私のところにイヤな役が回ってきてしまい、料理なら得意なんだけどなあと苦笑い。ゲーコラ、ガーコラ奇声をあげるニワトリと対面することになった。
足を縛り、羽根を抑え、首をナイフで掻き切る。5秒ほど激しく暴れるが、やがてぐったりとしてしまうので、逆さに吊してしばらく血を抜く。お湯につけて毛をむしれば、そこまでで、死刑執行人の大役は終わり、調理担当のものへ、食材としてのトリ肉を渡すのみである。

鍋にして食べた。うまい。本物の肉の味がする。
しかし、うまいけれど、胸の中に吐き気のような小さな痛みが残る。
「あまり食欲がない。今日だけベジタリアンだ。そうだな、白菜や豆腐のほうに思い入れをしたい。」
私たちの食生活は、多くの殺生にささえられているのだなと、つくづく思う。体の大きい牛や豚を殺すのは、もっと大変だろう。怒号の中、血まみれで、必死に抵抗する動物たち。屠殺場の光景を想像して、ゾッとした。私たちの「生」は、同類の「死」の上に成り立っている。私自身、雑草を殺し、イネを生かすのだから、やっぱり殺し屋になるのだろう。

 



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